ちょっと、還流CDについて別の話。
現時点での還流CDが68万枚というのは、確かに邦楽CD2億4000万枚、輸入版6000万枚にとっては微々たるものですが、2002年のライセンス枚数465万枚に対し還流率14.6%(CD17.8%、カセットテープ6.6%)と言われると結構多いという印象はあります。また、「たった68万枚ではないか?」というツッコミに対してのレコ協の言い分は、「今後積極的にアジアへのライセンス量を増やすから問題なのだ」ということなのでしょう。2007年には244万枚、2012年には1,265万枚が還流するとの予測を立てています。この辺りちょっと気になったので調べてみたのですが。
調査資料はこれですね。
株式会社文化科学研究所「日本音楽ソフトの還流量調査報告書」(2003年11月)
まず、現在の還流CDが68万枚ってのも、かなりアバウトなんだな。要は全国のディスカウントストア・ホームセンターを無作為に抽出して、陳列棚のCDを数えて推定ということ。
総店舗数×取扱い率×1店平均陳列量×在庫回転率=総販売量
という算出式です。
ディスカウントストアが
CD:4,441店×22.1%×149.76枚×3.5回転=514,443枚
カセットテープ:4,441店×22.1%×21.80巻×3.5回転=74,885巻
ホームセンターが
CD:4,356店×9.2%×53.45枚×3.5回転=74,971枚
カセットテープ:4,356店×9.2%×10.55巻×3.5回転=14,798巻
合計:679,097枚/巻
ということらしいです。カセットテープも含めて68万枚ということですね。んー、何か誤魔化されていような気も・・・特に回転率の「3.5回転」あたりが。これは、「わが国のCD販売店の平均的な数値」らしいのですが、ここに当てはめるのは適切なのかね?
まあここまでは良しとしましょう。もっと多いかも知れないし、少ないかもしれない。問題はここから。
将来需要に対する見通しを予測したものが、㈱三菱総合研究所が実施した「アジアにおける日本音楽ソフトの需要予測」(2003年9月22日)。まあ5年先、10年先にアジアで日本の音楽がどれだけ売れるかなど予測できるのかどうかかなり怪しいですが、経済成長率や海賊盤の減少比率から算出したところが、2007年には今の3倍の約1,623万枚、2012年は14倍の7,091万枚程度だそうです(なかなか強気ですな)。でそれに予測される還流率を掛けると2007年は244万枚、2012年で1,265万枚の還流ということらしい・・・ちょっと待った! そこで現状と同程度の還流率を掛けるのはおかしいんでは?(ちなみに2007年の還流率は15.0%、2012年は17.8%となりますね。還流率が増加する理由は書かれてませんが、カセットテープが減ってほぼCDのみになるという計算か?) 市場規模が大きくなった時点で、企業努力でめぼしい還流ルートを抑えられるんじゃないの? 「ウチら10年後は15倍売るつもりですー。還流枚数も15倍で大変なことになっちゃいますー、法律でなんとかしてくださいー。」って随分と調子のいいことで。
結局10年後の還流枚数の予測なんて憶測に憶測を掛けた全く根拠のない数字で、無理やり大きい数を出して同情を誘う作戦にしか思えないのですが。
4日のシンポジウムの感想など。
レコード会社、ディストリビューター、小売店側からの、輸入盤ビジネスの内部事情が、具体的な数字もちょっと教えてくれたりして興味深かったですね。
今もライセンス元にお願いして並行輸入を止めてもらうような事は、特に小さいレーベルでは良くある事というのは、安く買いたい消費者にとっては少し面白くない話かもしれませんが、まあ売る側の事情は理解できますよね(HEADZには儲かってほしいし)。とにかくそういう事は当事者間の契約で決めれば良い事で、そこに法律の規制が入るのは、とてもいびつな物を感じます。
特に心配なのは、この法律が施行され、実際に税関でどのように運用されるかを想像すると、法律では規制されないことになっている、国内盤が出ていない輸入盤にも影響が出る可能性があるということ。小さいながら個性的な品揃えの輸入盤屋が頑張ってくれているおかげで、メジャーには乗らなくとも素敵な音楽を僕等は知ることが出来ているので、彼らの仕事がやりにくくなる状況が生ずるのは非常に困ります。さらには個人輸入にまで規制がかかる可能性も無いとは言えない。「まさか。なぜそこまで悲観的に考えるのか?」と普通の人は思うかもしれないけれど、刑事罰を伴う法律が決まるということの重みを考えると、それくらいの心配は必要。施行されても何も起きないかも知れない。でも非常に悪いシナリオが進むかも知れない。一番ありそうで怖いのは、ゆっくりと消費者の気づかない速度で輸入盤市場が縮小していって、何年か経って「最近の洋楽シーンって何かつまんないよねー」なんてなっている事態かしら。やだやだ。
それとちょっと、「う~ん」と考えてしまうことは、川内議員は、「再販制度を放棄するなら、この輸入権も考慮に値する」と言っていたのだけれど、自分は「えっ? ちょっと待ってよ」と思ったわけ。もはやCDが安く買えないことが問題じゃなくて、欲しい商品が買えなくなるという事が大きな問題だから、輸入権が通ってしまう位ならば、今のまま再販制度があったほうが全然マシだと自分は思う。輸入権が施行された場合、すぐにでも行われそうで一番気がかりなのは、EU盤がCCCD、US盤がCD-DAのタイトルについて、US盤のみ規制が行われ、今までのようにAmazonでUS盤を入手することが出来なくなるんじゃないかということなんだけれども。
それで、高橋健太郎氏がMEMORY LAB 5月4日の Columnで、シンポジウム後の感想として、やや困りながら書いていることには、「文化庁やレコード協会はひょっとしたら、再販制度にはすでに見切りをつけているのかもしれない。だからこその輸入権創設ではないか。そして、二重の保護に対する批判が強まったら、切り捨てるのは再販制度であろう」との意見。ありえない話ではない。丁度CDからSACD/DVD-Audioの次世代メディアに移行が始まってきたわけで、このタイミングで再販制度を手放すのは仕方ないという考えはあっておかしくはない。そうなると「65カ国で導入されている輸入権をわが国にも」という理由はとても説得力を持つし、消費者側としても、「輸入盤なんか買わないから輸入権はどうでもいいよ、それよりも邦楽が安く買える方が嬉しい」という意見が勝ってしまうのではない? CCCDの件も、僕たちの「規格として欠陥のあるCCCDの代わりに、US盤の真っ当なCD-DAを買う権利が阻害される」という言い訳はまずお役人には通用しない。むしろ「違法コピーが可能なUS盤の輸入が規制できる」という理由の方が説得力あるものね。
再販制度とどちらを取るかと問われたら、音楽ファンの間でも意見が分かれるところなのかしら?
シンポジウムの音声・画像ファイル・要約・テキスト起こし・その他関連リンクは「テレビ見ようよ!(仮)」のこちらに強力にまとまっております。
掲示板やトラックバックでも情報頂いていますが、著作権法改正の実態を知るためのシンポジウム、明日開催ということで改めてプッシュ。これは反対のための集会ではなく、「実態を知るためのシンポジウム」なわけです。イマイチこの問題よくわからない、という人こそ参加してみてはいかがでしょうか? 私も行こうと思います。
選択肢を保護しよう!!
著作権法改正でCDの輸入が規制される?
実態を知るためのシンポジウム期日:5月4日(火曜日 祝日)
場所:新宿ロフトプラスワン
時間:午後1~3時
入場無料/ドリンク代500円のみ御負担ください
司会進行:ピーター・バラカン
パネラー:
民主党 川内博史衆議院議員
音楽評論家/HEADZ代表 佐々木敦氏
輸入盤ディストリビューター、リバーブ 石川真一氏
イースト・ワークス・エンタテインメント 高見一樹氏
音楽家 中原昌也氏
「ビルボード」誌日本支局 スティーヴ・マックルーア氏
「REMIX」誌スーパーバイザー 野田努氏
音楽評論家/エンジニア&プロデューサー 高橋健太郎
発起人:ピーター・バラカン、高橋健太郎
協力:藤川毅
この催しは三人の個人有志のみによって運営されます。いかなる団体とも無関係です。
ネット上では結構あちこちで目にするようになった話題ではあるものの、まだ一般的には全然知られていないのでしょうし、聞いたことがある人でも「よく知らないけど、輸入盤が買えなくなるような法案ができるの? まさか?」くらいの認識の人は多いでしょう。そういう自分もやはりよく判っていません。発案者の本意は何なのか? 洋楽輸入盤の規制をする隠された目的があるというのは本当なのか? もしそうだとしたら、誰がどのような利益を得ることを目論んで働きかけているのか? そして、この法案が問題のある現状のまま成立しないように、どのような行動をするべきなのか?
当日会場に行けない人のために、ネットラジオでの中継もあります。また後ほど、当日の模様の動画配信の予定もあるようです。そして今後、雑誌やテレビなどでもこの問題が取り上げられる機会が増えてくると思われます。どうか流さないで、まずは問題を知ってみましょう。
ちょっと、今の時点で自分の思っているところを書きますと、
憶測になってしまう部分は除いて、発案者の「邦楽CDの日本国内への還流のみを防止するのが目的」というのをひとまず素直に信じることにしましょうか。それでなおこの法案に反対なのは、単純に、言っていることと法案の内容が違うからです。邦楽CDの還流のみを防止するのが目的と言っているのだから、それ以上の効力のある法案になってしまうのは問題でしょ。「還流のみを防止する」法案に出来ない理由は、「内外無差別」の原則によるらしいのですが、ここらへんから難しくなってくるのだけれども、先日も触れた小倉秀夫弁護士がここで書いている修正案、例えばこれだとうまく問題が解決出来るということですよね。しかしこの件で修正協議が持たれたのですが、吉川晃著作権課長は法案修正に前向きではない。(上記修正案の3.が特に洋楽輸入盤について関係あるところですが、これに対する吉川著作権課長の反対理由が自分にはよく判らない。それと、別のエントリーで、この修正案でも洋楽輸入盤の規制を防ぐのには完全ではないと書かれていて、そのあたりも気になります。)
先月の文教科学委員会での参考人質疑から参院通過までの様子を見ての素人の率直な感想なんだけど、質疑で依田レコ協会長は「どうして洋楽輸入盤の規制にまで及ぶと取られてしまうのか、我々も困っている」というような事を言っていたと思うのですが、文化庁にもレコード協会にもそういった消費者の懸念が多くあることは伝わっているわけだから、スムーズに法案を通したいなら、洋楽輸入盤の規制にまで及ばないように、法案に適切な修正を加えるべく発案者側も努めるのが筋だと思うのだけれど。もし「内外無差別」とやらの関係でどうしてもそれができないのなら、結局これは著作権法上で定めるのは無理があるということではないの? 還流CDの為に、その何十倍も流通している洋楽輸入盤にも適用可能な法律を作って、「メジャー5社は規制のつもりは無いらしいですから」って子供の約束じゃないんだからさ! あるいは法案に盛り込めないまでも、こんな口約束ではないもっとちゃんとした効力のある取り決めは用意できないの? 今のままで信用してと言われてもそれは無理でしょうよ。だからまともな判断をする人の集まりならこの案に190人中190人が賛成するというのは有り得ないわけで。まあこの国の立法は所詮こんなもので、今更文句を言っても仕方ないのかもしれないけど。
で結局、この法改正に関するパブリックコメントをRIAA(全米レコード協会)が寄せていた事が明らかになりまして(民主党ホームエンタテイメント議員連盟ホームページにFaxのPDF公開、OTO-NETA、あとこちらにも日本語訳)、その詳しい内容についてはまた考えることとして、洋楽の規制も含めた形での法改正を支持する意見であることは確かです。依田氏は質疑できっぱりと、「洋楽輸入盤の規制については、その可能性は無い」と言っていましたが、やはりその発言は全くアテにならなかったわけです。とにかくここんとこ、きちんと説明してくださいな。